copepodaのブログ

観劇、スカステ、DVDなどの感想をつづる。

花組:ハンナのお花屋さん③

新たな事業を始めるにあたり、ゆきちゃんを思い出す。
宝塚なので細かいことは抜きにして、とりあえず、もう彼女しかいない、
共通の友人への聞き込みや、何か情報が入ったら教えてほしいというベーシックな探し方に加え、ネットストーキングにいそしむ。
(その際、眼鏡をかけるのだが、かける瞬間、2階席は全員オペラを覗きこんだことは言うまでもない。)
どうもチャットで知り合った「リトルマーメイド」はゆきちゃんじゃないかと、語り掛ける。
デンマークの森の美しさ、人を楽しませ、人のためになる仕事に関わることができる、
今まで苦労してきた君に手伝ってもらいたいと。


景子先生の思惑は世界平和とかそういうのだったかもしれないが、
個人的には、働くとは何か、を考えさせられる作品だった。


みりお君の仕事は話の中ではずっと軌道に乗っているので、
いわゆる仕事の問題で山場はない。
従業員は全員素直で働き者で申し分ない。そして飛竜つかさ氏がマッチョイケメン。
相棒の瀬戸さんは経営を支える元銀行員にして親友。
的確なサポートで、安定した経営が続く。
父親の急死に帰国している間、何事もなく従業員がきちんと店を開いてくれている。
自分が新規事業を立ち上げるにあたって、今の店を任せられる従業員が複数いる。


そういった日常を築き、保つことの難しさ。
社会人なら、学生でもバイトや委員会などで感じたことがあるはず。
波風立てずに発展・維持させる難しさに閉塞感。


花が好きというのは根底にあるとして、少しは父親への反発もあって名門大学を卒業しても花屋になったんだと思う。
でも花屋は自分の内面を表すのにぴったりな媒体であっただけで、みりお君のしたかったことは、母親と父親と楽しく過ごした、花に囲まれて暮らした幸せな少年時代を世界中の人に配りたかったわけなのよ!
それを日常の中でコツコツ積み上げて実現するとか、本当に立派ではないかと。
思い出すだけで泣けるわ。


また、最初から人当たりは良く、皆に好かれていたみりお君だが、ゆきちゃんとの出会い、父親との確執の解消、新規事業の準備を通して、さらに人間として成長していく姿に従業員たちが刺激され、自分たちもさらに精進せねばと、まさに正のスパイラル。


現実世界では働かない人、他人に面倒を押し付ける人、他人の足ひっぱることに専念する人、仕事の邪魔をする人種は不思議と一定数存在する。
そういった人間の存在は電通問題をはじめとするブラック企業問題の根底にあると思うのだが、本来、職場とはこのように日常の中で小さなことでも切磋琢磨し、様々な課題に皆で取り組むのが理想であり、目指すべきところなのでないだろうか、
というところまで飛躍して終わりにする。


思いがけない良作に、チケット追加してしまったんだぜ!